Remix / React Routerの歩みと、Shopifyアプリ開発者へのTips
フロントエンドWebアプリケーションフレームワーク「Remix」に関して、様々な情報が飛び交っていますが、経緯含めてややこしいため、2025年7月1日時点の情報としてまとめています。
Shopifyアプリを作った、またはこれから作ろうとしている方にとって重要な情報も記載していますが、歴史やShopify社の動き含めて興味深いため、是非ご一読ください。
1. きっかけは 2022 年の買収
2022 年10 月、Shopify はフルスタック Web フレームワーク Remix と開発チームを買収しました。公式エンジニアリングブログでは「Hydrogen をはじめとするコマース向けプロダクトを加速させるため」だと説明しています。
2. 2024 年――Remix と React Router の合流宣言
買収後 1 年半で、Remix チームは「Merging Remix and React Router」というブログ記事を公開。Remix が得意とするローダー/アクション、ストリーミング SSR などを React Router に取り込み、両者を実質的に一本化する方針を表明しました。
3. React Router v7 と Shopify の関係性
2025 年現在、React Router の公式サイトのフッターには 「Developed by Shopify」 のクレジットが入り、同社主導のプロジェクトであることが明示されています。
この v7 には Remix 由来のデータ取得 API が統合され、「フレームワークモード」を有効にするだけで Remix 同等の開発体験が得られる設計です。
4. Hydrogen も React Router v7 へ
Shopify 製ストアフロントフレームワーク Hydrogen は、2025 年5 月リリースで基盤ルーターを Remix から React Router v7 へ切り替えました。公式ドキュメントでは Future Flags の有効化と codemod の実行が移行ステップとして案内されています。
5. Shopify CLI のアプリテンプレートはどう変わる?
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現状(2025 年7 月)
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shopify app init のデフォルトは shopify-app-template-remix(Remix v2 系)。
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今後
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同テンプレートの issue tracker では「React Router v7 対応予定」が複数言及されており、Hydrogen と足並みを揃える形で React Router ベースの新テンプレート(仮称 shopify-app-template-router)が登場する見込みです。
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Shopify は「Remix v2 → React Router v7」移行用の codemod と 12 か月間の旧テンプレート保守を予告しており、既存アプリの開発者も計画的にアップグレードできます。
6. Remix v3 ――React 依存を離れる“別ライン”
2025 年5 月公開の「Wake up, Remix!」では、次期 Remix v3 を React 非依存(Preact フォーク)で再設計する方針が語られました。これは React Router v7 とは別プロダクトとして並走し、Shopify CLI テンプレートの直接的な後継ではありません。
詳細な経緯は分かりませんが、両プロジェクトともに同じ創業メンバー(Michael Jackson, Ryan Florence)が Shopify 在籍のまま両プロジェクトを舵取りしていることから、揉めて分裂ということでもなさそうで、React Router v7は安定して既存のReactアプリの保守的なサポートに専念し、Remix v3は“次世代”実験枠(AI DX・依存ゼロ指向)として足を引っ張るサポート対象を削ぎ落とし、革新的な取り組みとして進んでいくようです。
こんな動きをできるのは本当の意味でのテック企業Shopifyならではと思いますし、意思決定のスケールの大きさに圧巻です。
7. 開発者へのアドバイス
目的 |
推奨アクション |
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既存 Remix v2 アプリ |
Future Flags をすべて有効化 → React Router v7 用 codemod を試す |
新規 React アプリ |
最初から React Router v7(フレームワークモード)を採用 |
新規 非 React スタックに関心 |
Remix v3 のプレビューをウォッチ(まだ実運用は時期尚早) |
まとめ
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Remix v2 系は React Router v7 に統合され、Shopify は双方を OSS として主導。
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Shopify CLI の既存 Remix テンプレートも v7 ベースへ移行予定で、codemod による滑らかなアップグレードパスが用意される。
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Remix v3 は React を離れた実験的フレームワークとして開発が進行中だが、Shopify の公式アプリ開発フローとは切り分けて捉えるのが賢明。
これから Shopify アプリや Hydrogen ストアフロントを構築する開発者は、React Router v7 を前提にした設計に徐々にシフトしておくと、エコシステムの変化に柔軟に対応できます。
Remix v3はShopify アプリの文脈では、積極的に使うエコシステムメリットはなさそうですが、Webの最先端が詰まっていますので、そこにも興味がある場合は是非追ってみてください。