Shop Payと3Dセキュア認証:なぜ毎回の認証が不要なのか

はじめに


「確認コードを入力してください」「ワンタイムパスワードを確認してください」—こんな画面にうんざりしていませんか?

2025年4月から、クレジットカード決済における「3Dセキュア」の導入が本格的に義務化されました。しかし、Shop Payなど一部の決済サービスでは、この煩わしい認証が省略できるケースがあります。本記事では「なぜ不要?」「不要で大丈夫?」という疑問にお答えします。

3Dセキュア義務化の背景と例外規定

義務化の背景

経済産業省の「クレジットカード・セキュリティガイドライン6.0版」では、不正利用被害の増加を背景に、EC加盟店に対して3Dセキュア(EMV 3-Dセキュア)の導入が義務付けられました。この変更は割賦販売法を根拠とした法的要請であり、原則としてすべてのEC事業者に対応が求められています。

重要な例外規定

同ガイドラインには以下の重要な例外規定が明記されています:

「加盟店が EMV 3-D セキュア以外に講じる不正利用対策の内容や抑止効果に応じて、カード番号の登録時に EMV 3-D セキュアによる認証を行う運用や加盟店のリスク判断により EMV 3-D セキュアによる認証を行う運用も認められる。」(ガイドライン6.0 P59)

つまり、十分な代替セキュリティ対策を講じていれば、毎回の3Dセキュア認証は必須ではないということです。この例外規定が、Shop Payなどのサービスが3Dセキュア認証を省略できる法的根拠となっています。

Shop Payなど認証省略サービスの仕組み

Shop Pay(Shopify)の場合

Shop Payが3Dセキュア認証を省略できる理由は以下の複合的なセキュリティ対策にあります:

  1. 初回登録時の多段階認証
    • メールアドレス登録
    • SMS認証
    • カード情報登録時の検証
  2. 継続利用時の安全確保
    • 登録済みデバイスとSMS認証(6桁コード)の組み合わせ
    • PCI DSSレベル1準拠のセキュリティ体制(金融機関並みの安全性)
  3. リスクベースの認証
    • 通常と異なる利用パターンの場合のみ追加認証を要求

その他の認証省略可能なサービス

Apple Pay / Google Pay

  • 生体認証(Face ID/指紋認証)による強固な本人確認
  • トークン化技術によるカード情報の保護
  • デバイスと決済情報の紐付けによる安全性確保

PayPal / Amazon Pay

  • サービス独自のアカウント認証システム
  • 高度な不正検知アルゴリズム
  • 過去の取引履歴に基づいたユーザー評価

認証が必要になるケース

どんなサービスを使用しても、以下のような場合には認証が必要となることがあります:

  • 初回利用時:新しいカードやサービスを初めて使用する場合
  • 高額決済時:一定金額(例:1万円)以上の購入
  • 異常な利用パターン:普段と異なる時間帯、場所、金額での購入
  • 新規デバイス利用時:未登録の端末からの購入
  • カード会社判断時:カード発行会社がリスクありと判断した場合

ユーザーのメリットと注意点

メリット

  1. 購入体験の向上
    • 入力手順の削減による時間短縮
    • スムーズな購入フローによるストレス軽減
    • カゴ落ち(購入途中離脱)の減少
  2. 必要十分なセキュリティ
    • リスクの高い取引のみセキュリティチェック
    • 過剰な認証手続きの省略

注意点

  • 完全に認証をなくすことはできない
  • 高額決済や初回利用では通常通り認証が必要
  • サービスによって省略できる条件が異なる

EC事業者向け:認証省略サービスの活用法

1. 先進的な決済サービスの導入

前述のような認証省略可能な決済サービスを積極的に導入することで、顧客体験を向上させつつセキュリティも確保できます:

  • Shop Pay(Shopify)
  • Apple Pay / Google Pay
  • PayPal / Amazon Pay

2. AI不正検知システムの活用

  • 購入パターン分析:通常と異なる購入パターンのみ認証を要求
  • 地理的情報の活用:普段と異なる地域からのアクセス時のみ認証
  • 時間帯ベースの認証:通常の購入時間外の取引のみ認証

実用ツール例:「Kount」「Signifyd」「Riskified」「Adyen(RevenueProtect)」

3. 決済代行会社との連携最適化

各社の特徴を把握し、最適な設定を行いましょう:

  • GMOペイメントゲートウェイ:リスクベース認証対応のプラン
  • Stripe:Radar for Fraudでカスタムルール設定が可能
  • PayPal:独自の不正検知システム
  • Square:条件付き認証免除の設定

4. 例外申請と設定の最適化

  • カード会社への例外申請(不正対策実績の提示)
  • 金額ベースでの設定調整(少額決済での認証スキップ)
  • リピーター優遇設定(2回目以降の購入での認証省略)

まとめ

この記事を通し、Shop PayやApple Payをすでに導入されている皆様が3Dセキュア認証が不要とされる理由を理解し、お客様にも説明できるようになると嬉しいです。

3Dセキュア義務化という変化は、単なる規制強化ではなく、EC業界全体の信頼性を高める重要な転機です。新たな技術でセキュリティと使いやすさを両立できるのですから、私たちはお客様に「安全のために」不便を強いる必要はありません。

セキュリティ対策による事業者様の負担は避けられないかもしれません。しかし、お客様の信頼こそが最も価値ある資産であることを忘れないでください。短期的な手間を省くことよりも、長期的な信頼関係の構築が、今後のEC事業の成功を左右するのです。

最新のセキュリティ対応やスムーズな移行についてのご相談は、専門チームがサポートいたします。どうぞこちらからお気軽にお問い合わせください。

参考資料

本記事の内容は2025年4月時点の情報に基づいています。法規制やサービス内容は変更される可能性がありますので、最新情報は各公式サイトでご確認ください。