日本に移住したくてコードを書きはじめた
フラッグシップで働くメンバーのリアルな声をお届けします。今回は、フロントエンドエンジニアのRossellaにインタビューしました。

── まずは自己紹介も含め、日本に来たきっかけを教えてください。
Rossella「Rossellaです。FlagshipではFrontend Developerとして働いています。今日はよろしくお願いいたします。
日本に来たきっかけですが、実は夫が大学で日本語を専攻していたんです。私はもともと中国語専攻でしたが、日本文化もとても好きでした。
ロンドンで暮らしていた当時、ちょうどBrexitがあり、"新しい国に住んでみようか"となって、日本へ旅行に来たところ、すっかり気に入ってしまいまして。夫も日本文学などにとても興味があったので、本格的に移住を考えはじめました」
── 最終的に住む決め手は何だったのでしょうか?
Rossella「実際に日本に住んでみると、私たちの生活リズムに合っていると感じました。イタリアはコミュニティの結びつきが強く、人との関係が豊かな、とても魅力的な国です。一方で、私たちには日本の落ち着いた環境がしっくりきました」
Flagshipがプログラマーとして最初のチャンスを与えてくれた
── Flagshipとの最初の出会いについて教えてください。
Rossella「ちょっと面白い話なんですが、最初に求人広告を見たのはGumtreeという掲示板サイトでした。売買情報が中心で、求人サイトというわけではないんです。そこに偶然掲載されていた求人を見て応募しました。
私は完全に独学でプログラミングを学んだのですが、Flagshipが最初にチャンスを与えてくれた会社なんです。当時はジュニアエンジニアとしての仕事を見つけるのがとても難しかったので、本当に感謝していますね」
── もともとエンジニアリングを専攻していたわけではないんですね。
Rossella「そうです。日本に来る前はロンドンの映画館で、マーケティングの仕事をしていました。最初は映画館のスタッフとして働いていて、大学院でパートタイムの勉強をしながら、フルタイムで勤務していました。
その後、映画館の支店マネージャーを経て、本社でロイヤルティプログラムとイベントのコーディネーターになりました。なので、本当にまったく違うキャリアだったんです」

── 前職のマーケティング業務から、なぜエンジニアというまったく異なる道へ進もうと決めたのですか?
Rossella「日本に移住したいという気持ちが大きな理由でした。"日本語を学ぶか、プログラミングを学ぶか"と自問して、プログラミングの方が簡単かなと思ったんです(笑)
その時点ではエンジニアとしての経験はありませんでしたが、前職でITチームと一緒に仕事をする機会はありました。システム全体を組み立てる彼らの仕事に強く感銘を受けて、"自分もやってみたい"と感じていたというのもあります。
プログラミングを学ぶために、毎日仕事が終わったあと、HTMLやCSSの勉強をしたり、Women Who Codeなどのマイノリティ向けテックコミュニティのイベントに参加して、コードレビューを受けたりしていました」
一度辞めたあと、ふたたびFlagshipに戻った理由
── Flagshipで一度働いたあと、母国であるイタリアに戻られたそうですね。その理由を伺ってもいいですか?
Rossella「はい。COVIDの影響で家族との関係が非常に複雑になってしまい、不安も大きくなったんです。2020年に日本が国境を閉じたこともあって、"もうイタリアには戻れないかもしれない"と感じました。それで、一度イタリアに戻ることにしました」
── イタリアではどれくらいの期間滞在していたんですか?
Rossella「約10年ぶりにイタリアで暮らしました。実は、私も夫もイタリアで働いたことがそれまで一度もなかったんです。
新しい発見も多かったですが、イタリアに引っ越してから1年くらい経った頃には、日本で暮らしたいという気持ちがはっきりしてきましたね。日本の暮らし方のリズムが、やはり私たちにはとても合っていたんだと思います。
両親も年を重ねてきているので、その点は悩みましたが、最終的には家族とも相談して"生活の拠点は日本にしよう"と決めました。
もちろん、イタリアも私たちにとって"ホーム"ですが、生活の質や自分たちの気質を考えると、日本の方がしっくりきたんです」

── 日本に戻るにあたり、ふたたびFlagshipに入社した理由を教えてください。
Rossella「イタリアにいる間も、Kojiさん(注:神馬光滋CEO)とは定期的に連絡を取り合っていたんです。自分の経験を活かせる場があると感じて、戻ることを決めました。
私の強みは、技術とビジネスの両方を結びつけられることです。イタリアで自分のビジネスを動かした経験から、Shopifyの標準機能やLiquid、JavaScriptを使った実践的な実装に強みがあります。Flagshipでは、その専門性をさらに深めつつ、より複雑な技術課題にも挑戦したいと考えています。
2025年の初めにLinkedInで"日本に戻る予定です"と伝えたところ、「何か任せられることがあるかもしれない」と言ってもらい、マネージャーのEmilioさんとも相談して復帰が決まったという感じです」
UXの進化がおもしろい時期に来ている
── 現在はどのようなプロジェクトを担当されていますか?
Rossella「複数のタスクを抱えていますが、現在は音楽関係のクライアントや、国内の大手ビューティーブランドのプロジェクトに主に関わっていて、他の開発者が進めてきた機能の引き継ぎや改善に取り組んでいます。コードベースに慣れながら、パフォーマンスの最適化にも取り組んでいます。
最近は、Shopifyのlegacy customer accountsからnew customer accountsへの移行に伴う機能改善にも関わっています。初回ログイン後の情報収集フローや住所入力の体験を見直しながら、既存機能の制約も踏まえて、実現方法を整理し、実装やドキュメントの整備を進めています」

── ユーザーエクスペリエンス(UX)の改善にも関心を持っているようですが、どのようなことに取り組んでいますか?
Rossella「イタリアで働いていたときに、GoogleのUXデザイン認定プログラムを受講していました。そこで学んだのは、ユーザーが直感的に理解できるパターンを見つけることの重要性です。現在は主にバリアントセレクターのUX改善に注力しています。
具体的には、"A地点からB地点へどうやってたどり着くか"、そのステップ数やナビゲーションのわかりやすさ、エラーメッセージの適切さなどを重視しています。たとえば、ボタンが機能しないときに、"なぜ機能していないのか"が伝わらないとユーザーは離脱してしまいますよね。そうした点を改善しようとしています。
また、どのようにユーザーにフィードバックを与えるか、どう表現すれば理解しやすいかという点も重要です。ボタンの文言ひとつで離脱率が変わることもあるので、そうした細部にも気を配っています。
私はデザイナーではありませんが、UXの分野がどう変わっていくのかには強く興味を持っています。たとえば、AIチャットボットのように、10年後にはEコマースの体験そのものが大きく変わっているかもしれません。そういう意味でも、今はUXの進化が非常に面白い時期だと感じています」
Flagshipにはハッカー精神が根付いている
── 二度のジョインを経て、Flagshipの文化をどのように感じていますか?特に、他国と比べてどのように感じているか興味があります。
Rossella「印象的なのは"できない"と言わない姿勢ですね。クライアントに対しても、"どうすれば実現できるか"を前提にして動くんです。非常に前向きな姿勢で、"何かしら方法を見つけてやってみよう"という、いわばHacker Spiritが根付いています。
もちろん、納期とのバランスが必要になることもあります。でも、他の会社に比べてチャレンジを恐れず、技術的に難しい提案にも臆せず取り組めるのがFlagshipのユニークなところだと思います」
── Hacker SpiritはFlagshipの3つのコアバリュー("Start with Hacker Spirit"、"Be Professional"、"Pay it Forward")にも含まれていることですね。このなかでRossellaさんが特に共感するのはどれでしょう?
Rossella「"Pay it Forward"でしょうか。次の人のためにドキュメントを残したり、外部コミュニティで得た情報を社内に共有したりすることは、私にとって自然な行動です。
ただ記事のリンクを貼るだけではなく、「Flagshipにどう応用できるか」を考えて、自分なりのエネルギーを注ぐようにしています。
また、異なる文化背景のメンバーと働くうえでは、書かれたメッセージだけでは伝わりにくいことがあります。だから可能な限り電話やビデオ通話で話すようにしています。
ただ、会話だと言葉遣いがきつく聞こえてしまうこともあるので、相手の意図を直接確認することも重要です。
また、小さなことでも"ありがとう"と伝える、感謝の気持ちを言葉にすることも信頼関係を築くうえで大切だと思っています」

── Flagshipのパーパスである「Develop Maps(地図を描く)」に対しては、どのように貢献していきたいと考えていますか?
Rossella「私自身、国際的なShopifyコミュニティとのつながりがあるので、そこから得た情報を活用して、Flagshipがよりグローバルに展開できるような提案をしていきたいです。
たとえば"このアプリは面白いから、開発者とミーティングをしてみたら?"というような形で社内に持ち込めたらと思っています。
また、FlagshipはShopify App Storeの自社アプリ開発に多くのリソースを割いていますが、外部の視点を取り入れることで、さらに発展できると考えています。
私はShopifyに関する情報をいろんな角度から得ているので、そこからの学びを社内に共有することで、新しい"地図"を描くお手伝いができれば嬉しいです」
Shopifyがこれから注力する国は"日本"である

── 海外では、Flagshipをどのように紹介していますか?
Rossella「"日本で最初のShopify Plusパートナー"として紹介しています。エンタープライズ向けに、非常にカスタマイズされた技術的ソリューションを提供している点が強みです。
Flagship単体でも、Shopify業界では十分に認知されていますが、海外から見ると日本市場はまだ複雑な印象があるようで、"どうやって展開しているのか"と興味を持たれることも多いです。
2025年5月にトロントで開催されたShopify Editionsに参加したときも、"これからの注力国はイタリアと日本"という話が出ていました。Flagshipは、まさにその中心にいるポジションだと思います」
── 他のShopify関連企業と比べて、Flagshipに見られる特徴はありますか?
Rossella「他の多くの会社は、テーマ開発やマーケティング、Eメール施策などのサービス展開をしています。
一方、Flagshipは技術的なソリューションに特化していて、バックエンドの実装まで対応しています。また、"Hacker Spirit"があり、複雑な要件にも柔軟に取り組む姿勢があるのも特徴です」
── クライアント層についてはどうでしょう?
Rossella「現在のクライアントは日本企業が中心ですが、海外本社の企業が日本市場向けに出店するケースもあります。そういったケースでは、Flagshipの日本特有の知見――たとえば配送指定や多様な決済手段への対応――が大きな強みになります」
── 日本の開発要件は、他国と比べて特に難しいと感じますか?
Rossella「はい、そう思います。特にインカム(帳票まわり)やカスタマーサービス対応は非常に複雑です。日本の顧客は要求水準が高い印象がありますね。
たとえばレビュー文化です。Googleレビューや食べログで「星3つ」は日本人にとっては"悪くない"評価ですが、イタリアやアメリカでは"悪い"と受け取られます。日本だと、3.5が"とてもいい"という認識ですよね。
この文化的なギャップは、Webサイトの評価やUXのフィードバックにも反映されていると思います」
"典型的な日本企業"ではないからこそ、早めのコミュニケーションを
── Flagshipや日本で働くことに興味のある外国籍の方々には、どういったメッセージを送りたいですか?
Rossella「一番大事なのはポジティブな姿勢です。問題があっても、それをどうしようもない障害と考える必要はありません。必ず回避策や解決策があるし、チームと一緒に乗り越えることができます。
Flagshipは"典型的な日本企業"ではありません。多様な文化を持った人と協働することで、自分自身の視野も広がります。それに、仕事の進め方にも柔軟性があり、自分の裁量で働ける環境があります」
── もし日本での仕事文化に慣れるためのヒントがあれば教えてください。
Rossella「一番大事なのは早めのコミュニケーションですね。たとえばバグで詰まっていたら、そのことを早く伝えるべきです。遅れて報告すると、PMがクライアントに説明できなくなり、結果的にチーム全体の印象が悪くなってしまいます。
どんな会社でもコミュニケーションは大切ですが、リモート環境ではさらに重要になります。プロジェクトの透明性を保つためにも、些細なことでも早めに共有することが必要だと思います」
── 本日は本当にたくさんのお話をありがとうございました。
Rossella「こちらこそ、ありがとうございました!」
インタビュアー:Sho