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第2回 イノベーションと知の探求シリーズ を開催しました!
こんにちは。フラッグシップ株式会社 バックエンド・エンジニアのKeitaです。
前回は、第1回目のAppleはなぜ革命的なプロダクトを生み出せたのか -イノベーションはリベラルアーツから始まる- のセッションをレポートさせていただきました。みなさんにAppleのイノベーションにアラン・ケイが果たした重大な役割が伝わっていると嬉しいです。
今回は、2024年4月1日(月) に行われた第2回目の”情報技術の哲学史”の内容をレポートさせていただきます。NPO法人Talkingの日渡健介さんを講師にむかえ、オフライン3名、オンライン6名のメンバーが参加した、議論の白熱するセッションでした。情報技術の哲学的側面からの理解が深まった学び豊かな会のレポートを、さっそく始めていきましょう。
全体像
大きく分けると、以下の内容でセッションは進んでいきました。
はじめに: コンピュータ技術の本質
- 情報技術の歴史以前
- 根源的着想 [ 17世紀 ]
- 具現化への模索 [ 18 -19 世紀 ]
- 理論的躍進 [ 19-20 世紀 ]
- コンピュータの誕生 [ 大戦記 ]
- コンセプトの発展 [ 20世紀中盤 ]
- 商品化 [ 20世紀後半 ]
- グローバル化 [ 21世紀 ]
この概要を見ただけでもワクワクしてきませんか?哲学者・数学者・科学者の影響関係をこのようにみていくことで、情報技術の発展についての解像度がものすごく高まるんです。
根源的着想のパートでは、デカルトやライプニッツといった哲学者が出てきます。彼らも自分たちの発見・発明が遠い未来にまさか現代のコンピュータのようなものにつながるとは想像していなかったでしょう。現代の情報技術は、過去の偉大な先人たちの土台の上に成り立っているものなんだとしみじみと感じました。
3つをピックアップ!
結論からいうと、全ての内容が面白かったです。しかし、全てをここでお伝えする事はできませんので、特に面白かった部分を3つピックアップしてご紹介したいと思います!
1. コンピュータ技術の本質
みなさんはコンピュータ技術の本質ってなんだと思いますか?「計算力」「ネットワーク」「情報伝達」などオンライン、オフラインの参加者から次々にアイデアが出されました。考えてみると難しい問いですよね。私自身、普段は情報技術に関わる仕事をしているにもかかわらず、本質と問われると答えに詰まってしまいました。
今回のセッションで日渡さんが提示されたコンピュータ技術の本質というのがこちらです。
「論理 ✖️数学 ✖️機械」 ✖️「メディア」 ✖️ 「ネットワーク」
日渡さんによれば、現代のコンピュータ技術は3つの段階で発展してきたといいます。第1フェーズが「論理 ✖️数学 ✖️機械」の段階。これは1940年代に西洋の科学が総合されコンピュータが初めて実装化された段階です。第2フェーズの「メディア」は1980年代にアラン・ケイとスティーブ・ジョブズの登場によりGUIがMacintoshにより実装されコンピュータがメディアの機能を持ち始めた段階です。そして「ネットワーク」は1990年以降のインターネットの出現により、世界中のコンピュータがネットワーク化されていった段階です。
この関係性を見て、衝撃をうけるとともに深く納得しました。シンプルな分類ではありながらも、まさに本質を切り出しているように思いました。このフレームをもとに情報技術の歴史の説明を聞くと理解がより一層深まります。
皆さんはこのフレームをみてどのように感じますか?最近世界を席巻しているAIはこの本質のどこに入るでしょうか。あるいは、AIの登場によって、この枠組みを拡張する必要があると思いますか?色々考えてみると面白いかもしれませんね。
2. コンピュータの誕生
コンピュータ誕生に寄与した重要な概念や技術として、以下の4つが紹介されました。
・チューリング・マシーン ( アラン・チューリング )
・プログラム内蔵型コンピュータ ( フォン・ノイマン )
・情報理論 ( クロード・シャノン )
・サイバネティクス ( ノーバート・ウィーナー )
私が注目したのは、これらが提案された年代です。アラン・チューリングが「計算可能数について」という論文で理論的計算モデルを提案したのが1936年。その9年後の1945年には、フォン・ノイマンが「EDVAC」の設計に関する報告書を発表し、この設計思想は現代のコンピュータの基本構造となりました。その3年後の1948年にはシャノンが「通信の数学的理論」を、ウィーナーが著書「サイバネティクス」を発表します。
わずか12年ほどの間に、計算の理論的基礎から実用的なコンピュータの設計、そして情報処理の包括的な理論まで、コンピュータ科学の基礎が急速に確立されたのです!
当時の研究者を純粋にすごいと思う反面、そこには時代背景も大きく絡んでいました。第2次世界大戦によって暗号解読や弾道計算などの軍事的なニーズの急拡大により大規模な投資が行われ、情報技術の研究に優秀な人材が集められていきました。世界大戦は、悲劇的な出来事でありながら、技術革新の面では大きな推進力となっていたのですね。
3. コンセプトの発展
コンセプトの発展と聞いたとき、アラン・ケイの顔が思い浮かびました。彼はコンピュータのコンセプトを実際の商品へと橋渡しした重要な人物です。この事は、第1回目のセッションで深く掘り下げていますので、気になる方はぜひこちらの記事をご覧下さい。
また、ヴァネヴァー・ブッシュの「メメックス」の重要性も議論に上りました。ヴァネヴァー・ブッシュが1945年にLIFE誌に発表した「As We May Think」の論文は今日のコンピュータの発展に決定的な影響を与えた論文です。この論文の発想はテッド・ネルソンのハイパーテキスト、ティム・バーナーズ=リーのWWW(World Wide Web)、マーク・アンドリーセンのウェブブラウザ「Mosaic」へと発展していくとともに、ダグラス・エンゲルバートのユーザーインターフェイス研究、アラン・ケイのダイナブックの発想につながっている事を知りました。
彼らが提唱したコンセプトを理解すると、普段何気なく使っているPCが突如として人類の英知の結晶のように見えてきました。画面、キーボード、マウス、そしてインターネット接続 。これらすべてが長年の革新的アイデアと技術の集大成なのです、、!
日々の仕事や生活で使うPCがこうした偉大な思想家たちのビジョンの延長線上にあることを意識すると、私たちのコンピュータへの向き合い方も自ずと変わってくるかもしれませんね。
驚いたことに、社員の中にはヴァネヴァー・ブッシュやダグラス・エンゲルバートについて大学時代に学んでいた人もいました。このセッションは、私たちの組織内に眠る人材の豊かさも垣間見せてくれました。
まとめ
第2回目のセッションが終わり、壮大な1本の映画を見終わったかのような充実感に包まれました。歴史探訪とは単なる過去の振り返りではなく、未来への道標でもあることを強く実感しました。「次に何が築かれるのか」という問いへの答えは、まさにこの歴史の中にヒントが隠されていると思います。
約2時間にわたる知的興奮は、時空を超えた旅のようでして、このような貴重な機会を設けてくださった日渡さんには、感謝しかありません。
そして、この旅はまだ終わりではありません。第3回目のセッションでは生成AIがテーマとなり、3部作の完結編を迎えます。過去から現在、そして未来へと続くテクノロジーの物語が、どのような展開を見せるのか。また次回のレポートでお会いできることを楽しみにしています。